QOL向上記

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なぜ本態性振戦にβ遮断薬が有効なのか?

本態性振戦に対してβ遮断薬が有効であるという話があります。
ただしその機序に関しては詳しく聞いたことはなく、不思議に感じたので調べてみました。

 

本態性振戦とは成人に見られる動作時振戦(動作時のふるえ)としては最も多いものであり、日常生活の中の文字を書いたり、コップを持ったり、食事のときに食器を持ったりするとき起こります。
さらに本態性振戦は緩徐進行性であり、メインの上肢に加えて、頭部、声、(下肢)にも起こり得ます。
家族性の本態性振戦も存在し、家族性振戦とも呼ばれます。

 

本態性振戦の病態生理の大部分は不明です。
神経病態に関しても不明な点が多いのですが、小脳と脳幹の青斑核が深く関わっていると考えられています。

本態性振戦の臨床的特徴として、重力に対抗して意識的にある姿勢をとろうとするときに症状として表れます。さらに上腕が伸展位をとり、コップで飲み物を飲んだり指鼻試験など、目的のある動きをしようとする際にはより明らかに出現します。
振戦の振動数としては、6~12Hzと中~高の振動が認められることが典型的です。
頭部で振戦が認められる場合は、垂直方向及び水平方向の両方が認められます。

前置きが長くなりましたが、本題に入りたいと思います。


本態性振戦の治療薬としては、β遮断薬であるプロプラノロールやバルビツール系抗てんかん薬のプリミドンが有効です。
今回はこの中でもβ遮断薬を取り上げたいと思います。

 

プロプラノロールは非選択的β遮断薬です。
しかしながら、結局のところ振戦に対する明確な作用機序は完全には解明されていません。
本態性振戦は中枢神経系による疾患ですが、末梢に存在する筋紡錘のβ2受容体の遮断が有効であるとされています。っていうか筋紡錘ってβ2受容体があったのですね。
逆に、アドレナリンは筋紡錘の感度をアップレギュレートするために、本態性振戦を増悪させます。
しかし、プロプラノロールは親油性であり血液脳関門を通過しやすいことから、中枢神経系への影響は完全に分かっていないようです。

 

まとめ:β遮断薬は筋紡錘のβ2受容体を遮断することで、本態性振戦を改善するとされている

 

J Cent Nerv Syst Dis. 2013; 5: 43–55.